NVIDIAの純利益1,200億ドル、企業のAI投資は95%が測定可能な成果ゼロ──数字で見る「掘る側」と「売る側」
NVIDIAは2026会計年度(2026年1月期)に売上2,159億ドル・純利益1,200億ドルの過去最高を記録した一方、MIT発の調査は企業の生成AI導入パイロットの95%が収益への測定可能な効果を出せていないと報告した。NVIDIAの決算資料とMIT NANDAの報告を確認した。

目次
NVIDIAは2026会計年度(2025年1月26日〜2026年1月25日)の通期決算で、売上2,159億3,800万ドル(前年比65%増)、GAAP純利益1,200億6,700万ドル(前年728億8,000万ドルから大幅増)という、いずれも過去最高の数字を発表した。同じ時期、MITメディアラボのNANDAが2025年8月に公表した調査は、企業の生成AI導入パイロットの95%が収益への測定可能な効果を出せていないと報告している。この記事は2026年5月12日に公開した動画「AIゴールドラッシュで儲かってるのは、AIを作ってる会社じゃない」(動画: L0TyD6nhc3k)の内容を、公開後にNVIDIAの決算資料とMIT関連の報道を確認して記事にしたものだ。
以下は2026年8月27日時点で、NVIDIA公式ニュースルームおよびMIT NANDAの調査を報じたFortune誌の記事を直接確認して書いている。
- NVIDIAの2026会計年度(2026年1月期)通期決算は、売上2,159億3,800万ドル(前年比65%増)、GAAP純利益1,200億6,700万ドル。データセンター部門だけで通期売上1,937億ドル(前年比68%増)
- MIT NANDAの調査(150人へのインタビュー・従業員350人調査・公開AI導入事例300件の分析に基づく)は、生成AIパイロットの約5%だけが収益への急速な効果を出し、企業データセットの95%は「measurable P&L impact」(損益計算書への測定可能な影響)を出せていないと報告した
- 同調査は、専門ベンダーからのツール購入・パートナーシップによる導入が約67%の確率で成功するのに対し、社内独自開発は成功率がその3分の1にとどまると報告している
NVIDIAは本当に「過去最高益」だったのか
NVIDIAが2026年2月に発表した決算資料によれば、2026会計年度第4四半期(2025年10月27日〜2026年1月25日)の売上は681億ドルで、前四半期比20%増・前年同期比73%増の四半期最高記録。通期では売上2,159億3,800万ドル、前年度の1,304億9,700万ドルから65%増加した。GAAP粗利益率は通期71.1%、GAAP純利益は1,200億6,700万ドルで、前年度の728億8,000万ドルから大幅に伸びている。決算資料はデータセンター部門の売上を単独でも開示しており、通期1,937億ドル(前年比68%増)と、NVIDIAの成長の大部分をAI向けチップが牽引していることを裏付けている。
これは「AIをつくる側」ではなく「AIをつくるためのインフラを売る側」が確実に利益を出している、という動画の主張と整合する内容だ。ただし本記事執筆時点で、OpenAIやAnthropicなど主要なAIモデル開発企業の具体的な損益額(動画で言及されていた「4.4兆円の赤字予定」など)については、公式発表または信頼できる一次報道を確認できなかった。両社とも非公開企業であり、財務情報は限定的にしか開示されていない。この点は本記事では数値を伴う主張として採用していない。
企業のAI投資は本当に「95%がリターンゼロ」なのか
「95%」という数字の出どころは、MITメディアラボの研究プロジェクトNANDAが2025年に公表した報告書「The GenAI Divide: State of AI in Business 2025」だ。報告書自体を配信していたNANDAのサイトは本記事作成時点で構成が変わっており全文を直接確認できなかったため、この報告書を詳しく報じたFortune誌のニュースレター「CFO Daily」(2025年8月18日、Sheryl Estrada記者)の記事を確認した。
同記事によれば、この調査はエンタープライズのリーダー150人へのインタビュー、従業員350人への調査、公開されているAI導入事例300件の分析に基づいている。報告書は「約5%のAIパイロットプログラムが収益への急速な押し上げを達成しているが、大多数は停滞し、損益(P&L)への測定可能な影響をほとんど、あるいはまったく生み出せていない」としている。報告書の主著者であるAditya Challapally氏は、Fortuneの取材に対し「エンタープライズ向けAIソリューションの95%の失敗率は、GenAI Divide(生成AIの導入格差)の最も明確な現れだ」と述べたという。
この「95%」は、正確には「収益への急速な効果が出ていない」という意味であり、動画のように「リターンがゼロ」と言い切るのはやや強い表現になる。同記事によれば、失敗の主因はAIモデル自体の性能ではなく、企業側の「学習ギャップ」——ChatGPTのような汎用ツールは個人利用では柔軟性ゆえに有効だが、企業のワークフローに組み込んで学習・適応させる段階でつまずくケースが多いという分析だ。
同報告書は成功パターンについても言及している。専門ベンダーからのAIツール購入やパートナーシップによる導入は約67%の確率で成功する一方、社内での独自開発はその成功率が3分の1程度にとどまるという。予算配分にも偏りがあり、生成AI予算の半分以上が営業・マーケティング向けツールに投じられている一方、MITの調査が見出した最大のROIはバックオフィス業務の自動化(業務委託の削減、外部エージェンシー費用の削減、業務効率化)にあったとされている。
1849年のゴールドラッシュの比喩は妥当か
動画は「金を掘った人はほとんど儲からず、ツルハシを売った人が確実に儲かった」という1849年カリフォルニア・ゴールドラッシュの逸話を、現在のAI投資構造の比喩として使っている。この逸話自体は広く知られた史実だが、本記事では1849年当時の一次資料までは遡って確認していない。歴史的な逸話としての妥当性よりも、「NVIDIAという“ツルハシを売る側”が記録的な利益を上げている一方、多くの“掘る側”の企業が測定可能な成果を出せていない」という現在の構造そのものが、今回確認できた一次データによって裏付けられている、という点が本記事の主眼だ。
| 論点 | 確認できた内容 | 出典 |
|---|---|---|
| NVIDIAの通期売上・純利益 | 売上2,159億ドル(+65%)、純利益1,200億ドル | NVIDIA公式決算発表(2026年2月) |
| NVIDIAデータセンター部門売上 | 通期1,937億ドル(+68%) | 同上 |
| 企業のAI導入パイロット成功率 | 約5%が急速な収益効果、95%は測定可能な効果なし | MIT NANDA調査(Fortune経由、2025年8月) |
| 導入方式による成功率の差 | 購入・パートナー型が約67%、社内独自開発はその1/3程度 | 同上 |
| OpenAI/Anthropicの具体的な赤字額 | 未確認 | ─ |
| GPU稼働率・個人のAI活用度の具体的な割合 | 未確認 | ─ |
正直に書いておくべきこと
動画で紹介されていた「GPUの89%が稼働していない」「個人の80%がAIを使いこなせていない」という具体的な数値については、このセッションの調査範囲内で該当する一次資料を特定できなかった。ウェブ検索の利用枠を使い切った後、既知の主要メディア・研究機関のドメインへの直接アクセスを試みたが、該当する数値の出典にはたどり着けなかった。そのため本記事では、この2つの数値は使用していない。
また、MIT NANDAの調査結果についても留意点がある。「95%の失敗率」という数字は公表から約1年が経過しており、報告書自体の調査手法(インタビュー150人・調査対象者350人という規模)や、公表後に他の研究者・実務者から出た方法論上の指摘の有無について、本記事では追加検証していない。この数字を「AI投資は構造的に失敗する」という一般論として拡大解釈するのではなく、「2025年時点の企業導入の実態調査ではこう報告された」という時点限定の事実として読むのが適切だ。
NVIDIAの決算についても、四半期ごとの数字は変動しうる。本記事で示したのは2026会計年度(2026年1月25日締め)の確定数値であり、2026年8月27日時点でのNVIDIAの状況を示すものではない。
一次資料として使った記事とリンク先
本記事は、NVIDIA公式ニュースルーム「NVIDIA Announces Financial Results for Fourth Quarter and Fiscal 2026」(nvidianews.nvidia.com)と、Fortune誌「MIT report: 95% of generative AI pilots at companies are failing」(2025年8月18日、Sheryl Estrada記者)を一次・準一次ソースとして、2026年8月27日時点で直接確認して作成した。MIT NANDAの報告書本体サイトは構成が変わっており、報告書原文への直接アクセスでの再確認はできていない。
企業のAI導入実態については当サイトの企業の88%がAI導入済み、だが成果を出せているのは6%、企業AIの実態2026、NVIDIAの半導体市場での立ち位置についてはNVIDIAのAI半導体支配、AnthropicとOpenAIの資金調達動向についてはAnthropicとOpenAIが1週間差で相次ぎIPO申請も参照してほしい。
出典・参照資料
この記事の解説動画
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