動画生成AIのプロンプトはどこまで書くか──公式が「指定しない部分」を勧める理由
動画生成AIのプロンプトは詳しく書くほど良い、という前提は公式ドキュメントと食い違う。OpenAIのSora 2 Prompting Guideは「leaving certain elements open-ended will encourage the model to be more creative」と書きながら、同じ文書内で「Unless you describe these details, Sora will make them up」とも書いている。GoogleのVeoプロンプト解説は構成要素7つのうち4つに[Optional]を付けている。この2つが矛盾しない理由と、当サイト運営者が動画生成AIで作品を作りながら取った「指定しなかった箇所が良かった」という観察を、確認日2026-08-14の一次ソースで整理する。

目次
動画生成AIのプロンプトは、長く詳しく書くほど良くなるわけではない。かといって「短く書けば創造的になる」でもない。OpenAIとGoogleの公式ドキュメントを2026-08-14に読み直すと、どちらも「全要素を指定しろ」とは書いていない。分かれ目は語数ではなく、どの層を指定し、どの層を空けておくかにある。空けるとモデルが良い方向に埋めてくれる層と、空けると勝手に捏造されて事故になる層があり、この2つは別物として扱う必要がある。以下は、公式ドキュメントの原文と、当サイト運営者が実際に動画生成AIで作品を作りながら取った一次記録の両方から、その切り分けを整理したものだ。
- OpenAIの「Sora 2 Prompting Guide」は
leaving certain elements open-ended will encourage the model to be more creative(一部の要素を開けたままにしておくと、モデルはより創造的になる)と明記している【一次ソース・確認日2026-08-14】- 同じ文書は
Unless you describe these details, Sora will make them up(これらの詳細を書かない限り、Soraはそれを勝手に作り上げる)とも書いている。「開ける」と「書き落とす」は同一視されていない【一次ソース・確認日2026-08-14】- GoogleのVeoプロンプト解説(Prompt writing basics)は構成要素7つのうち4つ──カメラ位置と動き/構図/フォーカスとレンズ効果/アンビエンス──に
[Optional]を付けている【一次ソース・確認日2026-08-14】
公式ドキュメントは「全部書け」とは言っていない
日本語圏で読める動画生成AIのプロンプト解説は、ほぼ「具体的に、詳しく、要素を漏らさず書け」で揃っている。テキスト生成AI向けのプロンプト設計の基本原則でも「曖昧さを排除し具体的に書く」は5原則の一つとして挙げられており、この考え方自体は誤りではない。ところが動画生成AIの提供元の公式ドキュメントを読むと、そこまで一方向ではない。
OpenAIの「Sora 2 Prompting Guide」(OpenAI Cookbook/確認日2026-08-14)には、プロンプトの密度について次の記述がある。
| 原文(Sora 2 Prompting Guide) | 内容 |
|---|---|
Shorter prompts give the model more creative freedom. Expect surprising results. |
短いプロンプトはモデルに創造の余地を与える。想定外の結果を覚悟せよ |
Longer, more detailed prompts restrict the model’s creativity. |
長く詳細なプロンプトはモデルの創造性を制限する |
In fact, leaving certain elements open-ended will encourage the model to be more creative. |
実際、一部の要素を開けたままにしておくとモデルはより創造的になる |
Unless you describe these details, Sora will make them up. |
これらの詳細を書かない限り、Soraはそれを勝手に作り上げる |
If you leave out details, they’ll improvise – and you may not get what you envisioned. |
詳細を落とせばモデルは即興で埋める。思い描いたものが出てこない可能性がある |
この5行は一見すると矛盾している。同じ文書が「開けておけ」と「書かないと捏造される」を並べているからだ。だが矛盾ではなく、開けることの利得とコストを両方書いていると読むのが素直だろう。同ガイドはこの点を detailed prompts give you control and consistency, while lighter prompts open space for creative outcomes(詳細なプロンプトは制御と一貫性を、軽いプロンプトは創造的な結果の余地を与える)と整理し、The right balance depends on your goals and the result you’re aiming for.(適切なバランスは目的と狙う結果次第だ)と締めている。つまり公式は、密度を1本の軸として提示し、どこに置くかは制作者の判断に投げている。
Googleは7要素のうち4つを [Optional] と明示している
Googleの「Generate videos with Veo 3.1 in Gemini API」(Google AI for Developers/確認日2026-08-14)にある「Prompt writing basics」は、プロンプトの構成要素を次のように列挙している。うち4つには [Optional] が明示されている。
| 要素 | 公式の位置づけ | 説明(原文の要点) |
|---|---|---|
| Subject(被写体) | 必須扱い | 動画に入れたい物・人・動物・風景 |
| Action(動作) | 必須扱い | 被写体が何をしているか(歩く、走る、頭を向ける等) |
| Style(スタイル) | 必須扱い | sci-fi、horror などの映画スタイル語で方向を指定 |
| Camera positioning and motion(カメラ位置と動き) | [Optional] |
aerial view、dolly shot のような語 |
| Composition(構図) | [Optional] |
wide shot、close-up などフレーミング |
| Focus and lens effects(フォーカスとレンズ効果) | [Optional] |
shallow focus、macro lens など |
| Ambiance(アンビエンス) | [Optional] |
色と光がシーンに与える寄与(blue tones 等) |
7要素中4要素、割合にして半分以上が任意扱いになっている。しかも任意側に落ちているのは、日本語の解説記事で「これを書くとプロっぽくなる」と紹介されがちなカメラワーク・構図・レンズ・色味の4項目だ。一方で同ページは Use descriptive language: Use adjectives and adverbs to paint a clear picture for Veo(描写的な言葉を使う。形容詞と副詞で明確な絵を描け)とも書いており、「短くしろ」という主張はしていない。任意項目があることと薄く書けは別の話である点に注意がいる。
「開ける」と「書き落とす」の違い
ここが実務上いちばん効く区別だと考えている。同じ「書かない」でも、結果は正反対に振れる。
| 種類 | 何が起きるか | 該当しやすい層 |
|---|---|---|
| 意図して開ける | モデルが持っている物理・間・演技の既定値が働き、書いて指定するより自然になることがある | 水しぶき、布や髪の揺れ、平伏や会釈の間、視線の落とし方、被写界深度の移り変わり |
| 書き落とす | モデルが不足を即興で埋める。埋め方は制御下になく、意図と無関係なものが混入する | 台詞の有無、キャラクターの人数、時代考証、衣装の素材、画面外から現れる要素 |
Soraのガイドが improvise(即興で埋める)と make them up(勝手に作る)という語をどちらも否定的な文脈で使っているのに対し、open-ended(開けたまま)を肯定的な文脈で使っているのは、この差に対応していると読める。書かなかった結果が「モデルの得意な埋め方」に落ちるならプラス、「モデルの勝手な創作」に落ちるならマイナスになる。
当サイトの実制作では、良かった箇所の多くが無指定だった【観察】
当サイト運営者が動画生成AIで制作した江戸の行列・不思議の国のアリスのお茶会などの作品で、出来上がりを見て「ここが良かった」と感じた箇所を後からプロンプトと突き合わせたところ、その多くがプロンプトに書いていない箇所だった。
- 魚を担いだ物売りがコミカルに平伏する動き──プロンプトに書いたのは
"set down their loads and kneel too"(荷を下ろして同じくひざまずく)という動作の骨格だけ。むしろ入れていたのはno cartoonish expressions(漫画的な表情は不可)という禁止側の指示で、平伏の滑稽さそのものは指示していない - ウサギが穴に飛び込むときの水しぶき──未指定
- お茶会でのピント送り──未指定
いずれも「動作の骨格は書き、質感・間・物理はモデルに委ねた」箇所にあたる。Googleが [Optional] に落としているフォーカスとレンズ効果、Soraが open-ended を勧める領域と、経験的に重なっている。
ただしこれは1作品群での観察であり、法則として一般化できるところまでは確認していない。「良かった箇所が無指定だった」ことと「無指定だから良かった」ことは同じではなく、指定した箇所が失敗しやすかったのか、単に指定しなかった箇所の方が数として多かったのかを分離できていない。同種の観察の元データは動画生成AIプロンプト技法台帳に記録している。
逆に、空けたら捏造された層【実証済み】
同じ制作で、空けたことがはっきり事故になった層もある。ネイティブ音声生成を持つモデルに対し、音の指定を「歓声」とだけ書いた回では、全キャラクターが意味不明な言語を喋り出した。No music, no dialogue, no spoken words, no singing と明示的に禁止して初めて解消している。
これはSoraのガイドが書いている Unless you describe these details, Sora will make them up の実例にあたる。音声を生成できるモデルにとって「音について何も書かれていない」は「音を出すな」ではなく「好きにしていい」と等価になる。同様の失敗は人数(指定しないと増殖する)、時代考証(指定しないと現代的な小物が混ざる)でも起きた。禁止の書き方と構造側の対処はプロンプトを語彙でなく構造で直すに分けて書いている。
では短く書けばいいのか──単純化できない理由
「詳しく書くほど良い」が成り立たないなら逆に振ればいい、とはならない。両社の公式ドキュメントは、開ける前に書くべき骨格をはっきり示しているからだ。
Soraのガイドは、機能するプロンプトの形をこう説明している。A clear prompt describes a shot as if you were sketching it onto a storyboard. State the camera framing, note depth of field, describe the action in beats, and set the lighting and palette.(明快なプロンプトは、絵コンテに描き起こすようにショットを記述する。カメラのフレーミングを述べ、被写界深度を書き添え、動作をビートで記述し、ライティングとパレットを決める)。ここで挙がっているのは要素の網羅ではなくショットとしての骨格だ。
さらに同ガイドは尺と台詞量の関係を a 4-second shot will usually accommodate one or two short exchanges, while an 8-second clip can support a few more(4秒のショットには通常1〜2回の短いやり取り、8秒のクリップならもう少し入る)と数字で示し、Long, complex speeches are unlikely to sync well and may break pacing.(長く複雑な台詞は同期しにくく、ペースを壊す可能性がある)と警告している。これは「短く書け」ではなく「入る量を超えて書くな」であり、削る対象は語数ではなく詰め込んだ事件の数だという話になる。
Google側も前述のとおり [Optional] を4つ置く一方で「形容詞と副詞で明確な絵を描け」と書いている。両社を並べると、共通しているのは次の形だ。
| 層 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 被写体・動作・スタイル | 書く | GoogleのPrompt writing basicsで [Optional] が付いていない3要素 |
| ショットの骨格(フレーミング、動作のビート、ライティング) | 書く | Soraガイドの「絵コンテに描き起こすように」 |
| モデルが勝手に生成しうる層(音声・台詞・人数) | 禁止側を書く | Soraガイドの make them up |
| カメラワーク・構図・レンズ・色味の細部 | 開けてよい | Googleが [Optional] 指定 |
| 質感・間・物理(しぶき、揺れ、演技の呼吸) | 開ける価値がある | Soraガイドの open-ended/当サイトの観察【観察】 |
実際の書き分け手順
上の表を制作手順に落とすと、こうなる。
- 被写体・動作・スタイルを書く。 ここは省かない。Googleが必須扱いにしている3要素にあたる
- ショットの骨格を書く。 フレーミングと動作のビート。台詞を入れるなら尺との対応(4秒=短いやり取り1〜2回)を先に決める
- 勝手に生成される層を禁止で塞ぐ。 音声を生成するモデルなら音の扱いを明示する。人数や時代考証など、空けると即興される項目も同様
- 残りは意図的に空ける。 カメラの細部、レンズ効果、色味、そして質感・間・物理。ここを書き足したくなったときは、「制御が欲しい」のか「なんとなく詳しい方が良さそう」なのかを分ける
- 出た絵を見て、良かった箇所がどこだったかを記録する。 指定した箇所か、空けた箇所か。これを積むと、次から自分の題材における「空けてよい層」が分かってくる
4を書き足すほど再現性は上がり、驚きは減る。Soraのガイドが detailed prompts give you control and consistency(詳細なプロンプトは制御と一貫性を与える)と書いているのはこの意味であり、連番カットや案件納品のように「同じ画を何度も出す」用途では詳細側に寄せる判断が合理的だ。一方で1本勝負の映像なら、開けた側に賭ける余地がある。どちらが正解かは目的で変わる、というのが公式ドキュメントの立場でもある。
実験ではなく観察にとどまる部分
- Google Cloud(Vertex AI)側の同名ページは、2026-08-14時点でWebFetchでは本文を取得できなかった。 ナビゲーションのみが返るため、本記事のGoogle側の引用はすべて
ai.google.dev/gemini-api/docs/veo(Gemini APIドキュメント)から取った。Vertex AI側のプロンプトガイドに、要素の任意性について別の表現がある可能性は排除できていない - Veoには「prompt rewriter」があり、書いていない要素が自動で足される。 Google Cloud(Vertex AI)の公式ドキュメント「Turn off Veo's prompt rewriter」によると、この機能はユーザーのプロンプトに映像の描写・カメラの動き・書き起こし・効果音を追加する。Veo 3とVeo 3.1では無効化できないと記載されている(2026年8月14日確認)。つまりVeo 3系では「短く書いて余白を残す」という判断の意味が変わる。詳細はVeoのprompt rewriterと3系で切れない仕様にまとめた
- 「良かった箇所の多くが無指定だった」は観察であって実験ではない。 同一シーンで指定あり/なしを揃えて比較したわけではなく、後から振り返っての集計にすぎない。逆因果(指定した箇所ほど難易度が高かった)を排除できていない
- 本記事の公式引用はSora 2とVeo 3.1に対するものだ。 他モデル(Runway、Kling、Seedance等)で同じ切り分けが成立するかは検証していない。モデルごとに事前分布も既定の埋め方も違うため、そのまま移せる保証はない
- 効果を保証するものではない。 「空ければ良くなる」ではなく「空けた方が良い層と、空けると事故る層が分かれている」というのが本記事の主張であり、その境界は題材とモデルによって動く
確認した公式ドキュメントと制作ログ
- OpenAI「Sora 2 Prompting Guide」(OpenAI Cookbook)https://developers.openai.com/cookbook/examples/sora/sora2_prompting_guide (確認日2026-08-14)
- Google「Generate videos with Veo 3.1 in Gemini API」(Google AI for Developers、Prompt writing basics 節)https://ai.google.dev/gemini-api/docs/veo (確認日2026-08-14)
- Google Cloud「Turn off Veo's prompt rewriter」(Vertex AI)https://web.archive.org/web/20260824073711/https://docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/models/video/turn-the-prompt-rewriter-off (確認日2026-08-14)
- AI時短ラボ 制作ログ(動画生成AIプロンプト技法台帳・2026-08-12時点/非公開の一次記録。公開版は本クラスタの各記事)
出典・参照資料
更新・訂正履歴
- 出典URLをWeb Archiveのスナップショットに差し替えた。本記事が引用しているGoogle Cloudのドキュメント「Turn off Veo's prompt rewriter」は、2026-09-11時点で404を返さずに同ドメインの models/video/overview へ黙って転送されるようになっており、引用した本文は転送先には存在しない。リンクは生きているように見えるが実質はリンク切れである。Internet Archiveの2026年8月24日のスナップショットには You cant disable the prompt rewriter when using Veo 3 and 3.1 models. を含む本文が一字一句残っており、記事の記述は執筆時点で正確だったことを確認したうえで、出典URLをそのスナップショットに差し替えた。同じ出典を参照していた当サイトの複数記事について、同じ差し替えをまとめて行っている。
- OpenAI「Sora 2 Prompting Guide」原文と突合し、model's creativity・they'll improvise・you're aiming forの3箇所でアポストロフィがASCII表記になっており原文のU+2019と不一致だったため修正した。また「Googleの公式ガイドにはYou don't need to use all elements in every prompt...という一文がある」としていた引用は、ai.google.dev/gemini-api/docs/veoの該当ページ全文を取得しても存在しなかったため削除した。Veoのprompt rewriterに関する記述(無効化不可の記載)は内容自体はGoogle Cloud「Turn off Veo's prompt rewriter」で確認できたが、sourcesにURLが無かったため出典として追加した。
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