AI時短ラボ
研究· 約17

AIが天気予報を変える──Google DeepMindのWeatherNext 2とは

Google DeepMindが2026年8月6日、気象予測AI「WeatherNext 2」をコードとモデル重みごとオープンソース化した。台風進路・強度予測でリードタイムを24時間以上伸ばし、従来の100分の1の粗さの解像度で高精度を出す仕組みをNature論文と合わせて公開している。

AIが天気予報を変える──Google DeepMindのWeatherNext 2とは
執筆・編集:
目次

追記(2026年9月4日):本記事が扱うWeatherNext 2の後継として、Googleは2026年9月3日に「WeatherNext 3」を発表した。公式発表によると、リアルタイムの衛星データの取り込み・1時間ごとの更新・解像度の向上・降水予測の精緻化・クリーンエネルギー向け変数の追加が入り、Google検索・Gemini・Google マップ・Google Maps Platform・Google Cloudに組み込まれている。以下の本文はWeatherNext 2について書いたもので、内容は発表当時(2026年8月6日)の一次資料に基づく。出典に挙げたdeepmind.google/science/weathernext/は現在WeatherNext 3の内容に差し替わっているため、WeatherNext 2の記述の裏取りにはNature論文と発表時のブログ記事を参照してほしい。

3行まとめ

  1. Google DeepMindは2026年8月6日、気象予測AI「WeatherNext 2」と台風特化版「WeatherNext Cyclones」のコードとモデル重みをオープンソース化した。
  2. 台風の進路・強度・風の構造を、従来モデルより24時間以上早いリードタイムで、しかも100倍粗い解像度(28km四方)のデータから予測できる。
  3. すでにGoogle検索・Gemini・Pixel Weather・Google Maps Platformの天気機能の裏側で稼働しており、2025年のハリケーン・メリッサ(ジャマイカ上陸)の予測でも使われた。

何が発表されたのか

Google DeepMindは2026年8月6日付のブログ記事で、気象予測AIモデルファミリー「WeatherNext 2」の内容を公式サイトで公開した(同記事は8月11日に更新)。あわせて、Natureに掲載された論文とともに、モデルのコードと重みを誰でも使える形でオープンソース化したと発表している。

公開されているのは主に3つのモデルだ。

  • WeatherNext Cyclones: 2025年のハリケーンシーズン中に実際に稼働していた台風特化モデル
  • WeatherNext 2: それを引き継いで10月に運用化された後継モデル(発表文に年の明記はないが、文脈上2025年10月とみられる)
  • WeatherNext 2-mini: TPU1基・無料のColabノートブックでも動く軽量版(解像度は111km四方に粗くなる)

DeepMindはこれらを「Google Earth AI」の一部と位置づけており、気象予測サイト「Weather Lab」でも実際に予測結果を試せるようになっている。Weather Labは最近インターフェースを刷新し、台風進路だけでなく気温・降水量・風速などのグローバルな気象予測も1画面で見られるようになった。

何がどれだけ良くなったのか──公式が挙げる数字

DeepMindの発表文で確認できる具体的な数字は次の通りだ。

  • リードタイム: 2023〜2024年の過去の台風で検証したところ、進路・強度・風の構造の予測でWeatherNext Cyclonesは平均して24時間(丸1日)以上のリードタイム優位を獲得した。DeepMindはこれを「過去20年間のトレンドに照らして10年分の進歩に相当する」と表現している
  • 解像度: WeatherNext Cyclonesは28km四方というデータ解像度で高精度を出す。これは従来の高解像度モデルの100分の1粗い解像度にあたる。なぜこの粗さで精度が出るのかは「未解明の研究課題」だとDeepMind自身が認めている
  • アンサンブル規模: 昨年(2025年)は1回の予測で50通りのシナリオを生成していたが、今年は1,000通りに拡大。これによりハリケーン・メリッサで起きたような「急速強化」といった、まれだが重大な事象を捉えやすくなった
  • 速度: TPU1基で15日先までの予報を1分未満で生成できる
  • 予報頻度: 6時間先までの予報を1日4回生成する(DeepMindの製品ページ表記)
  • 学習データ: 約20テラバイトの全球大気データと、過去の台風データベース「IBTrACS」(約5,000件の台風記録)を使って訓練されている

技術的な核は「Functional Generative Networks(FGN)」という手法で、気象の持つ不確実性を捉えるためのアンサンブル生成を効率化しているという。また、台風の進路(広域の大気の流れが決める)と強度(コアの局所的な熱力学プロセスが決める)は、従来は別々のモデルで扱う必要があったが、WeatherNextは両方を単一モデルで扱える点を「橋渡し」と表現している。

台風特化版とは別に、Googleは「WeatherNext 2」本体も別記事で発表していた

ここまでの数字は主にDeepMindブログ(台風予測に特化した記事)からのものだが、WeatherNext 2という汎用モデル自体は、2025年11月17日付でGoogle公式ブログ(blog.google、著者名義は「The WeatherNext team」)に別記事として発表されている。この記事をcurlで取得すると、台風以外の一般的な気象予測についての具体的な数字が確認できた。

  • 旧WeatherNextモデルに対する優位性:「気温・風・湿度など変数と、0〜15日先までのリードタイムの99.9%で、旧世代のWeatherNextモデルを上回った」と明記
  • 速度:TPU1基で1分未満、物理法則ベースの従来モデルではスーパーコンピュータで数時間かかる計算に相当するとしている
  • 時間解像度:予測の時間刻みを最大1時間単位まで細かくできる(従来はより粗い間隔だったことが示唆されている)
  • 速度倍率:「旧WeatherNextモデルの8倍速く予報を生成できる」との記載

FGN(Functional Generative Networks)の仕組みについても、この記事はより具体的に説明している。モデルが学習するのは「marginals(周辺分布)」──特定地点の気温、特定高度の風速、湿度といった、個別・単独の気象要素だけだという。ところがこの学習だけから、モデルは「joints(同時分布)」──広い地域全体が高温にさらされる範囲や、風力発電所全体の予想発電量といった、複数の要素が絡み合う複雑な予測を導けるようになるとしている。「個別要素だけを学習させたのに、複合的な予測ができるようになる」という点が、この記事がFGNの新規性として強調している部分だ。

主要な数字を表で並べる

項目 数値・内容 出典
リードタイム優位 平均24時間(丸1日)以上 DeepMind公式ブログ
データ解像度 28km四方(従来の高解像度モデルの100分の1の粗さ) DeepMind公式ブログ
アンサンブル規模 最大1,000通り(従来は50通り) DeepMind公式ブログ/Nature論文アブストラクトでも同じ「up to 1,000-member ensembles」の記述を確認
推論速度 TPU1基で15日先までの予報を1分未満で生成 DeepMind公式ブログ
学習データ 約20テラバイトの全球大気データ+台風データベース「IBTrACS」(約5,000件) DeepMind公式ブログ
検証対象の期間 ブログは「2023〜2024年の過去台風」と記載。一方Nature論文のアブストラクトは"Evaluated on tropical cyclones from 2023–2025"(2023〜2025年)と記載 両者をcurlで突き合わせて確認した相違点

(表の数値はDeepMind公式ブログとNature論文アブストラクトをそれぞれcurlで取得し突き合わせたもの。検証期間の記載がブログと論文で1年分ズレている点は、この記事のために新たに気づいた食い違いであり、どちらが正しい・最新かは本記事では判断していない。)

Nature論文のアブストラクト(nature.com/articles/s41586-026-10953-2)は、上記の主要な数字(リードタイム優位・1,000メンバーのアンサンブル)をDeepMindのブログとおおむね同じ内容で記載しており、査読を経た論文としても同種の主張がなされていることが確認できた。ただし論文の本文(Methods節や図表を含む全文)は今回の調査では読み込んでおらず、アブストラクトの記載内容の確認にとどまる。

モデルの実体はGitHubで公開されている──コードネームは「FNV3」

コード・重みの公開先を実際にcurlで確認すると、GitHubリポジトリgoogle-deepmind/weathernextが実体だった。GitHub APIで取得したメタデータによれば、このリポジトリはWeatherNext 2の発表より前の2023年7月14日に作成され、確認時点(2026年8月31日)でスター7,606・フォーク977、ライセンスはApache License 2.0。直近のpushは2026年8月11日で、DeepMindブログの更新日(8月11日)と一致する。READMEには、このリポジトリがWeatherNext 2に加えて、前世代モデルのGraphCast・GenCastのコードも含む「WeatherNext系モデルの本拠地」だと明記されている。

READMEの記載でとくに興味深いのは、2025年の大西洋ハリケーンシーズン中に実際に運用されていたモデルの名称だ。

"The model that ran live during the 2025 Atlantic hurricane season, publicly referred to as FNV3 (NHC's postprocessed version was called GDMI)."

(訳)「2025年の大西洋ハリケーンシーズン中に実際に稼働していたモデルは、公には『FNV3』と呼ばれていた(NHC=米国立ハリケーンセンターが後処理したバージョンは『GDMI』と呼ばれた)」

つまり「WeatherNext Cyclones」という名前は今回の発表用の呼称で、2025年シーズン中の現場では「FNV3」「GDMI」という別名で運用されていたことになる。READMEはさらに、公開されている重みファイルが学習データのカットオフ年ごとに<2025(2024年までのデータで学習、2025年シーズンで運用)・<2024<2023という3世代に分かれ、各世代がそれぞれ4つのアンサンブルメンバー(model1〜4.npz)で構成されていることも明記している。

READMEにはもう1つ、前章で触れた「検証期間のズレ」を読み解く手がかりになりそうな記述があった。「論文の付録には、2025年シーズンのNHC管轄海域における部分的な評価と、2025年9月のトラッカー改善がどう結果を改善したかが含まれる」という一文だ。ブログの「2023〜2024年」とNature論文アブストラクトの「2023〜2025年」という記載の違いは、論文の主要な評価が2023〜2024年(本文)で、2025年分は付録に部分的な追加評価として別立てで収録されている、という構造を示唆している可能性がある。ただし、これはGitHub READMEの記述からの推測であり、Nature論文の本文・付録そのものを読んで確認したわけではない点は明記しておく。

実際どこで使われているのか

DeepMindが挙げている実例と提供チャネルは以下の通り。

  • 2025年ハリケーン・メリッサ: NHC(米国立ハリケーンセンター)がWeatherNextの支援を受け、メリッサの急速強化とジャマイカ上陸を予測。事前警報の発令につながり、現地チームが準備する時間を確保できたとしている
  • Google製品への統合: Google検索、Gemini、Pixel Weather、Google Maps PlatformのWeather APIの気象予測の精度向上に使われている
  • 企業向け提供: Gemini Enterprise Agent Platform経由でWeatherNext 2をカスタマイズして予報を作成できるほか、BigQueryやGoogle Earth Engineを通じた高度な研究・地理空間分析、下流モデルの学習データとしても利用可能
  • 研究コミュニティ向け: コードとモデル重みが無償公開されており、学術研究・実運用の予報・より特化したローカルモデルの開発に使える

注意書きも公式に書かれている

Weather Labについて、DeepMindは「予測はまだ開発中のモデルによって生成されたものであり、公式な気象予報や警報ではない」と明記している。意思決定に使う際は、地域の気象機関や気象庁の公式予報を参照するよう注意書きが添えられている。オープンソース化された研究用モデルと、実際の防災判断に使う公式予報は別物として扱う必要がある、という位置づけだ。

日本にとっての意味

このモデル自体は日本語での提供や日本の気象庁との連携について、DeepMindの発表文では言及がない。ただし、Google検索やGoogle Maps Platform経由での天気情報は日本でも使われているサービスであり、裏側の予測精度が上がれば間接的に影響が及ぶ可能性はある。また、コードと重みが公開されたことで、日本の研究機関や気象関連企業が自前でWeatherNext系モデルを検証・応用する道が開けたという点は、今回の発表の実務的な意味として大きい。

比較対象はDeepMindが自ら選んだ台風データ

  • Nature論文はアブストラクトのみcurlで確認した。本文(Methods節・図表・査読者コメント)や、第三者による再現検証の有無は未確認
  • 「24時間以上のリードタイム優位」「10年分の進歩」「旧モデル比99.9%の変数で優位」という評価は、いずれもDeepMind/Google自身が実施した比較に基づく発表であり、Nature誌の査読を経た主張はあるものの、外部の独立した気象機関による同一条件での再検証結果ではない
  • ブログは検証対象を「2023〜2024年の過去台風」、Nature論文アブストラクトは「2023〜2025年」と記載しており、1年分の食い違いがある。GitHub READMEの記述から「論文付録に2025年分の部分評価が別途ある」という構造の可能性は見えたが、Nature論文本体を読んで確定させたわけではない
  • 気象庁など日本の公的気象機関がWeatherNext系モデルをどう評価しているか、日本語での言及は確認できなかった
  • 「なぜ28km四方という粗い解像度でここまでの精度が出るのか」はDeepMind自身が「オープンな研究課題」としており、仕組みの全容はまだ説明されていない
  • FGN(Functional Generative Networks)の技術論文(arXiv 2506.10772、Ferran Alet氏ほか10名の共著、計11名、2025年6月12日投稿)はabstractの存在と著者一覧のみをcurlで確認した。数式・アーキテクチャの詳細に踏み込んだ論文本文は今回読んでいない

関連記事

シェア: ポスト はてブ

出典・参照資料

AIニュースの解説を動画でも

YouTubeでは注目ニュースの背景を解説し、Xでは新着記事をお知らせしています。

コメント

まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?

AIについて聞きたいことはありますか?

質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。

質問箱を見る →

新しい記事をメールで受け取る

AIの新しい発表を、出典付きで整理して届けます。

関連記事