Isomorphic Labsとは──AlphaFoldの先にある創薬AI企業を一次情報で整理する
Isomorphic LabsはGoogle DeepMindからスピンアウトした創薬AI企業で、CEOはノーベル化学賞受賞者のDemis Hassabis氏。2026年5月にThrive Capital主導のシリーズBで21億ドルを調達し、1月にはJohnson & Johnsonとの研究提携を発表した。自社の「AI Drug Design Engine(IsoDDE)」を軸に、低分子・抗体・ペプチド・分子糊など複数のモダリティで創薬候補を生成するとしている。

目次
Isomorphic Labsは、Google DeepMindからスピンアウトした創薬に特化したAI企業だ。公式サイトは自社を「ノーベル賞を受賞したAlphaFoldシステムの上に、そしてその先に構築する」企業と位置づけ、CEOはDeepMind共同創業者でもあるDemis Hassabis氏が兼務している。
3行まとめ
- Isomorphic LabsはGoogle DeepMindからスピンアウトした創薬AI企業で、CEOはノーベル化学賞受賞者のDemis Hassabis氏。2026年5月にThrive Capital主導のシリーズBで21億ドルを調達した。
- 中核技術「AI Drug Design Engine(IsoDDE)」は、2024年5月公開のAlphaFold 3を土台に、そこからさらに複数のブレークスルーを重ねた創薬エンジンだと公式サイトは説明する。自社の技術ページ(Our Tech)を確認すると、腫瘍学(oncology)・免疫学(immunology)を対象とした社内創薬パイプラインを独自に開発中だと明記されている
- 2026年1月にJohnson & Johnsonとの研究提携を発表。ただしIsoDDEのモデルアーキテクチャの詳細、パイプラインの具体的な候補数、臨床試験の進捗は、本記事で確認した公式サイトの範囲では非開示のままだった。
何をしている会社か
公式サイトのミッション表現は「生物学と情報科学の間に横たわる、宇宙における根底的な対称性」への信念を意味する社名「Isomorphism(同型)」に象徴されている。学際的な創薬専門家と機械学習専門家からなるチームが、科学的発見を加速する新しい予測・生成AIモデルを構築してきたとしている。
同社の中核技術は**AI Drug Design Engine(略称IsoDDE)**と呼ばれる創薬エンジンだ。公式発表によれば、低分子(small molecules)・抗体(antibodies)・ペプチド(peptides)・分子糊(molecular glues)など複数のモダリティにまたがる創薬候補を生成できる能力を持つとされている。
資金調達の推移
公式ニュースページで確認できる資金調達の履歴は次の通り。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2025年3月31日 | 6億ドルの外部投資ラウンドを発表 |
| 2026年5月12日 | シリーズBで21億ドルを調達したと発表 |
2026年5月12日付の公式発表によると、シリーズBはThrive Capitalが主導し、既存出資者のAlphabet・GVに加え、新規出資者としてMGX・Temasek・CapitalG・UK Sovereign AI Fundが参加した。この結果、Isomorphic Labsの「グローバルな資本基盤」が大きく拡大したとしている。
大手製薬企業との提携
公式ニュースページから確認できる企業提携・組織関連の主な発表は次の通り。
- 2026年1月20日: Johnson & Johnsonとの、モダリティ横断・複数ターゲットの研究提携を発表。大分子・バイオロジクス設計を含む、IsoDDEの多モダリティ創薬能力を活用する内容とされる
- 2025年11月26日: Max Jaderberg氏をPresidentに任命すると発表
- 2025年6月17日: Dr. Ben Wolf氏をChief Medical Officerに任命し、米国拠点を設立
- 2026年7月16日: 「Our approach to bioresilience(バイオレジリエンスへの私たちのアプローチ)」を公表
J&Jとの提携について、公式発表はこう説明している。
「この提携は、Isoの先駆的なAI能力と、ターゲット生物学・創薬におけるJohnson & Johnsonの専門知識を組み合わせるものだ」
公式ニュース一覧には、これら以外にもポッドキャスト・インタビュー・キャリア関連のコンテンツが並んでいる。「The Quest to 'Solve All Disease' with AI: Isomorphic Labs' Max Jaderberg」というポッドキャストや、「Meet our team: Agnieszka & Michael」といった社員紹介コンテンツも公開されており、単なる研究発表だけでなく、組織としての情報発信にも力を入れている様子がうかがえる。
AlphaFold 3の先に何を積み上げたか──Our Techページの記載
公式サイトの「Our Tech」ページを確認すると、IsoDDEとAlphaFoldの関係についてもう少し具体的な説明があった。
We developed and released AlphaFold 3 in May 2024. This latest generation model allows researchers to model the structures and interactions of all of life's molecules with unprecedented accuracy. But to create a truly generalisable drug design engine, we have developed multiple further breakthroughs that tackle the full spectrum of complexity in drug design.
(訳: 私たちは2024年5月にAlphaFold 3を開発・公開した。この最新世代のモデルは、研究者が生命を構成するあらゆる分子の構造・相互作用を、前例のない精度でモデル化できるようにする。しかし真に汎用的な創薬エンジンを作るには、創薬の複雑さの全領域に取り組む、さらに複数のブレークスルーを重ねる必要があった。)
同ページはまた、独自の学習基盤として「dataverse」と呼ぶ、生命科学データを独自にキュレーションしたデータ集合を挙げ、大規模なGPU群を使ったin-silico(コンピュータ上での)実験を大量に走らせる研究環境の基盤になっているとしている。
社内の創薬パイプラインについても言及があり、「パートナー企業との共同プログラムに加えて、腫瘍学(oncology)と免疫学(immunology)に焦点を当てた社内創薬候補パイプラインも開発している(we are also developing an internal drug candidate pipeline focused in oncology and immunology)」と明記されている。ただし、このパイプラインに何件の候補化合物が含まれるか、臨床試験段階にどれだけ進んでいるかという具体的な数字は、このページにも記載がなかった。
Hassabis氏の役割変化とIsomorphic Labsへの言及
Isomorphic LabsのCEOであるDemis Hassabis氏は、同時にGoogle DeepMindの会長 兼 Alphabetチーフサイエンティストという立場も持つ。同氏は2026年、DeepMindの日常運営から離れる決定を発表した際、あわせて自身がCEOを務めるIsomorphic Labsに「むしろ力を入れる」と書いている。「AIの一番の応用先は人間の健康の改善であるべきだ」という一節も残しており、Isomorphic Labsが同氏個人のキャリアの中でも比重を増している位置づけがうかがえる(詳しくはHassabis氏のAGI移行に関する記事を参照)。
「バイオレジリエンス」という新しい打ち出し方
2026年7月16日付の公式発表「Our approach to bioresilience」は、同社が単なる「創薬の高速化」だけでなく、より広い意味での生物学的な回復力(バイオレジリエンス)という枠組みで自社の取り組みを位置づけ始めていることを示している。具体的な技術内容は本記事で参照した範囲では詳細まで確認できていないが、創薬という個別疾患への対処から、より予防的・システム的な生物学理解へと事業の語り口が広がりつつある兆候として記録しておく。
技術的な詳細はモデルアーキテクチャも含め非開示
- 本記事はIsomorphic Labs公式サイトのトップページ・ニュース一覧・個別発表記事・Our Tech(技術)ページを一次資料としている。Our Techページで「AlphaFold 3を土台にさらなるブレークスルーを重ねた」という位置づけと、社内パイプラインが腫瘍学・免疫学分野を対象にしていることまでは確認できたが、IsoDDEの具体的なモデルアーキテクチャ(パラメータ数、学習手法等)や、AlphaFold 3との技術的な差分の詳細は、今回参照したページには記載がなく確認できなかった
- Eli LillyやNovartisなど、他の大手製薬企業との提携報道については、本記事で確認できた公式ニュース一覧(2025年3月〜2026年7月分)には該当する発表が見当たらず、本記事では扱っていない
- 社内パイプラインの対象疾患領域(腫瘍学・免疫学)までは確認できたが、実際に何件の創薬候補が存在し、臨床試験段階にどれだけ進んでいるかという進捗の具体的な数字は、公式サイトのトップページ・ニュースページ・Our Techページのいずれの範囲でも確認できなかった
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