Higgsfieldが評価額54億ドルでシリーズB調達──8カ月前の4倍、年換算売上7億ドル・Fortune 500の390社と取引と自社発表
動画・画像生成AI企業のHiggsfieldは2026年8月17日、DST Global主導で4億ドルのシリーズBを評価額54億ドルで調達したと発表した。8カ月前の評価額13億ドルから約4倍。PR Newswireの公式リリース原文とTechCrunchの報道、SEC提出書類を突き合わせて数字を確認する。

動画・画像生成AIを手がけるHiggsfieldが、2026年8月17日にシリーズBの調達を発表した。当初はTechCrunchの報道のみを情報源としていたが、記事中でリンクされていたPR Newswireの公式リリース原文(初回アクセス時は404で取得できなかった)に本記事作成時点で再アクセスしたところ取得できたため、公式リリースの原文と、SEC EDGARに残るHiggsfield Inc.のForm D(証券の非公開募集に関する届出)を突き合わせて数字を確認し直した。
3行まとめ
- Higgsfieldは2026年8月17日、DST Global主導で4億ドルのシリーズBを評価額54億ドルで調達したと発表。8カ月前のシリーズA評価額13億ドルから4倍超に上昇した。
- 自社発表では年換算売上7億ドル・Fortune 500のうち390社と取引。ユーザー数は「30百万人」で共通するが、対象国数はTechCrunchが「200カ国」、Higgsfield自身のPR Newswireリリース原文は「238カ国・地域」と、報道と一次資料で数字が食い違っている。
- SEC EDGARのForm D(2024年提出、シードラウンド分)には、TechCrunch記事に名前が出てこない共同創業者Yerzat Dulat氏の名があり、PR NewswireリリースでもDST Global創業者Yuri Milner氏が「Alex(Mashrabov)とYerzat」と2人の名を挙げている。
発表の内容(PR Newswire公式リリースより)
Higgsfield自身がPR Newswire経由で2026年8月17日に出したリリースによれば、要点は次の通り。
- 4億ドルのシリーズBを評価額54億ドルで調達。リードはDST Global
- 参加投資家として、Tribe Capital、Goldman Sachs AlternativesのGrowth Equity部門、Smash Capital、Fifth Wall、Valor Capitalの名が挙がる。スーパーモデルで投資家のNatalia Vodianova Arnault氏も出資し、アドバイザーとして参加するという
- シリーズA時点の評価額13億ドルから「4倍超」に上昇。同月、年換算売上が7億ドルに達したと発表
- ユーザー数は「238カ国・地域で3,000万人以上」、最大市場は米国
- 2026年5月に投入した「Supercomputer」というエージェント型機能のロールアウト後、3カ月でエージェント型プロダクトの利用者数が42倍に増加し、月間2,000万件超のコンテンツ生成につながったと主張
- Fortune 500のうち390社の映像制作を担っていると主張。広告・マーケティング、メディア・エンタメ、放送、ファッション、小売、消費財、テクノロジー、金融、製薬など幅広い業種の企業と取引しているという
- 調達資金の用途は、研究開発への投資継続、グローバルインフラの拡張、AI人材の採用、市場開拓の拡大
- 教育関連の取り組みとして、無料トレーニングプログラム「Higgsfield Academy」(累計40万人超が受講ページを訪問、レッスン完了6.7万件)と、2026年9月開始予定の「Higgsfield For Good」(NGO「YGA」との提携で、7万人の学生・1.3万人の教育者にAIツールを提供する計画)を挙げている
Alex Mashrabov氏(共同創業者・CEO)は、以前Snapchatの顔フィルター・Cameo機能を手がけたコンピュータービジョン企業「AI Factory」を共同創業した人物で、AI Factoryは2019年にSnapが買収したとリリースに明記されている。
TechCrunchの取材に対しMashrabov氏は、調達資金の用途について「採用・製品開発に加えて、計算資源の確保に充てる」と説明している。「動画はAIの中で最も計算集約的な領域の一つで、動画1分の処理は6万語のテキスト処理に相当する」とし、SynthesiaやRunwayといった競合に対して計算資源を安定確保することが競争力維持に必要な支出になっていると述べている。同記事はまた、Higgsfieldが映画製作者向けの「Cinema Studio」、マーケティング・広告向けの「Marketing Studio」といったツール群を展開し、過去1年間にCannes映画祭やニューヨークでAI生成映画のプレミア上映を行い話題になったと伝えている。
TechCrunchの報道との数字の食い違い
TechCrunch(2026年8月17日)の記事は、このPR Newswireリリースを引用する形で「3,000万人のユーザーが200カ国に広がっている」と書いている。しかし本記事でPR Newswireのリリース原文を直接確認したところ、原文の表現は「30 million users globally across 238 countries and territories」であり、200ではなく238だった。ユーザー数(3,000万人以上)は両者で一致しているが、対象国・地域数についてはTechCrunchの記述と一次資料の間に食い違いがある。本記事はHiggsfield自身のリリース原文の数字(238カ国・地域)を採用する。
投資家についても差がある。TechCrunchは「DST Globalがリードし、Goldman Sachs Alternatives・Valor Capital・Tribe Capitalなど多数が参加した」と3社を挙げるにとどまるが、PR Newswireのリリース原文は新規・既存を分けて列挙している。新規はDST Global(リード)に加えTribe Capital・Growth Equity at Goldman Sachs Alternatives・Smash Capital・Fifth Wall・Valor Capital・Intel Capital・Liberty Global Tech Ventures・Mirae Asset Capital・NTT DOCOMO Ventures。既存投資家としてAccel・Menlo Ventures・AI Capital Partners(Alpha Intelligence CapitalのUS拠点ファンド)・GFT Ventures・Capra Ventures・BAM Corner Point・BroadLight Capitalも参加したと書かれている。
SEC Form Dで確認できたこと
SEC EDGARで「Higgsfield」を検索すると、Higgsfield Inc.(CIK 0002019711、デラウェア州法人、本社カリフォルニア州Los Gatos)名義のForm D(証券の非公開募集に関する届出)が1件見つかった。2024年4月12日付でCEOのAleksandr Mashrabov氏が署名し、4月15日に提出されている。この届出は今回のシリーズBではなく、シードラウンド(Series Seed、Series Seed-1、Series Seed-2優先株)についてのものだ。
| 項目 | Form D記載内容 |
|---|---|
| 法人名 | Higgsfield Inc.(設立州: デラウェア) |
| 設立年 | 2023年 |
| 役員(Executive Officer・Director) | Aleksandr Mashrabov氏、Yerzat Dulat氏 |
| 初回販売日 | 2024年1月18日 |
| 累計調達額(このラウンド) | 8,159,970ドル |
| 投資家数 | 47名 |
| 対象証券 | Series Seed、Series Seed-1、Series Seed-2優先株、およびそれらから転換される普通株式 |
ここで確認できるYerzat Dulat氏という人物は、TechCrunchの記事には名前が出てこない。一方、PR Newswireのリリース原文には、DST Global創業者のYuri Milner氏によるコメントとして「We are looking forward to supporting Alex, Yerzat, and the team(AlexとYerzat、そしてチームを支援できることを楽しみにしている)」という一文があり、独立した2つの一次資料(SEC提出書類とPR Newswireリリース)の両方に、Mashrabov氏と並ぶ人物としてYerzat(Dulat)氏の名前が出てくる。TechCrunchの記事が「創業者は元Snap幹部のAlex Mashrabov氏」とだけ書いているのは、共同創業者の一人を省略した書き方だったことになる。
なお、このForm Dの8,159,970ドルは今回のシリーズB(4億ドル)とは別の、2024年時点のシードラウンドの金額であり、両者を混同しないよう明記しておく。シリーズB自体についてのSEC Form D(本記事執筆時点でHiggsfieldが米国で非公開株式を募集した場合に提出義務が生じうる届出)は、本記事執筆時点でEDGAR上に見当たらなかった。
この点を2026年8月31日にあらためてEDGARの企業別Form D検索結果(Atomフィード)で再照会したが、Higgsfield Inc.(CIK 0002019711)名義で登録されているForm Dは依然として2024年4月15日提出の1件のみで、シリーズBに対応する新規のForm Dはまだ確認できなかった。発表(8月17日)から2週間ほどしか経っていないため単に届出前である可能性、非公開募集の構成上米国内での新規届出が不要な可能性のどちらもあり得るが、本記事ではどちらかを断定していない。
この記事の性質について
当ラボはHiggsfieldからスポンサーシップを受け、同社のツールを動画制作で使用してきた経緯がある。本記事はこの資金調達発表について、Higgsfield自身のリリース原文とTechCrunchの報道、SEC提出書類を突き合わせて数字を確認したもので、当ラボ独自の評価や推奨は含まない。年換算売上・ユーザー数・取引社数など、リリース中の数字はすべてHiggsfield自身の発表内容であり、第三者による監査・検証を経たものではない。
売上7億ドルの算定根拠は確認できていない
- 「年換算売上7億ドル」「エージェント型プロダクトの利用者42倍増」「月間2,000万件のコンテンツ生成」といった数字はいずれもHiggsfield自身の発表であり、算定方法(どの期間のどの活動を年換算しているか等)についての説明はリリース本文にはなく、本記事では確認できていない。
- 投資家として名前が挙がったTribe Capital・Smash Capital・Fifth Wall・Valor Capital・Goldman Sachs Alternativesの出資額の内訳(DST Global以外が具体的にいくら出資したか)は、リリース・TechCrunch記事のいずれにも記載がなく確認できていない。
- 一部の海外メディア(Reuters・FTの見出しレベル)は「リード投資家はGoldmanとIntel」としているという情報があったが、この2媒体の本文は本記事作成時点でも確認できておらず、真偽を判断できない。本記事ではPR Newswire公式リリースの記述(リードはDST Global)を一次資料として採用した。なおIntel Capitalについては、リリース原文が新規参加投資家の一社として名前を挙げており、参加そのものは確認できる(リードではない)。
- シリーズB自体についてのSEC Form D提出の有無は、2026年8月31日時点のEDGAR再照会でも確認できなかった(詳細は前段参照)。今後届出が追加される可能性は残る。
出典・参照資料
- 二次資料Higgsfield raises $400M Series B, quadrupling its valuation in 8 months to $5.4B — TechCrunch ↗
- 一次資料Higgsfield Raises $400 Million Series B Financing at $5.4 Billion Valuation — PR Newswire(Higgsfield公式リリース) ↗
- 一次資料Higgsfield Inc. Form D(Notice of Exempt Offering of Securities)— SEC EDGAR ↗
- 一次資料Higgsfield Inc. Filing History(Form D検索結果、2026-08-31時点でSEC EDGARを再照会) ↗
更新・訂正履歴
- 投資家に関する記述を補正。(1) TechCrunchが「DST Globalがリード」とだけ書いていると要約していたが、原文は DST Global led the latest round, with many other investors piling in, including Goldman Sachs Alternatives, Valor Capital, and Tribe Capital. で3社にも触れていた。(2) PR Newswire のリリース原文から挙げていた参加投資家が5社にとどまっていたので、Intel Capital・Liberty Global Tech Ventures・Mirae Asset Capital・NTT DOCOMO Ventures(新規)と、Accel・Menlo Ventures・AI Capital Partners・GFT Ventures・Capra Ventures・BAM Corner Point・BroadLight Capital(既存)を補い、新規と既存を分けて書いた。あわせて、本文が「真偽を判断できない」としていたIntelについて、リリース原文では新規参加投資家の一社として名前があること(リードではないこと)を注記した。
AIニュースの解説を動画でも
YouTubeでは注目ニュースの背景を解説し、Xでは新着記事をお知らせしています。
コメント
まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?
AIについて聞きたいことはありますか?
質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。
質問箱を見る →新しい記事をメールで受け取る
AIの新しい発表を、出典付きで整理して届けます。