RunwayがGWM-1で目指す次──「動画生成」から「世界そのものをシミュレートする」への転換
Runwayが2025年12月11日、リアルタイムで動く「ワールドモデル」ファミリー第1弾「GWM-1」を発表した。Gen-4.5をベースにした自己回帰モデルで、探索可能な空間を作る「GWM Worlds」、会話するキャラクターの「Runway Characters(GWM Avatars)」、ロボット操作の「GWM Robotics」の3系統に分かれ、いずれもアクセスは招待制の申請フォーム経由。

動画生成AIの会社として知られるRunwayが、2025年12月11日付の研究発表で「動画を作る」の先にある目標を明確にした。名付けて「GWM-1」――Runway初の汎用ワールドモデル(General World Model)ファミリーである。本稿はrunwayml.com/researchの一次発表を読み、何が発表されたのかを確認できた範囲で整理する。
3行まとめ
- GWM-1はRunwayの動画生成モデルGen-4.5をベースにした自己回帰(フレームごとに逐次生成する)モデルで、リアルタイムに動作し、カメラの向き・ロボットの動作コマンド・音声といった「行動」によってインタラクティブに制御できる
- 現時点では用途別に分かれた3つの派生モデル──探索可能な空間を作る「GWM Worlds」、会話するキャラクターの「Runway Characters」(発表文中ではGWM Avatarsと呼称)、ロボット操作向けの「GWM Robotics」──として提供されており、単一の基盤モデルへの統合はまだ「取り組んでいる最中」の段階
- 利用は申請制。ロボティクス向けSDK(Pythonで行動条件付き動画生成を行うAPI)はページ内で「Request Access」ボタンから申請する形式になっている
そもそも「ワールドモデル」とは何を指すか
Runwayは2023年12月11日、ちょうど2年前にあたる研究方針の発表で「ワールドモデル」を「環境の内部表現を構築し、それを使って環境内の将来の出来事をシミュレートするAIシステム」と定義していた。当時の発表では、Gen-2のような動画生成モデルを「ごく初期の、限定的なワールドモデルの一形態」と位置づけ、物理法則やモノの動きについてある程度の理解を持ってはいるものの、複雑なカメラワークや物体の動きにはまだ対応しきれていない、としていた。
GWM-1の発表文はこの2023年の宣言を「2年前」として明示的に振り返り、「今日、私たちはGWM-1──私たちにとって初の汎用ワールドモデルファミリーを発表する」と続けている。
GWM-1の技術的な骨格
発表文によれば、GWM-1はGen-4.5の上に構築された自己回帰モデルで、フレームを1枚ずつ生成しながらリアルタイムに動作する。特徴として強調されているのは「行動(アクション)による対話的な制御」で、具体的にはカメラの姿勢(camera pose)、ロボットへのコマンド(robot commands)、音声(audio)が例として挙げられている。つまり単に映像を再生するだけでなく、ユーザー(またはエージェント)の入力に応じて次に何が起きるかを都度生成する仕組みだ。
ベースとなったGen-4.5については、Runwayの別の研究発表ページ(2025年12月1日付)を確認すると、「Artificial Analysis Text-to-Video Benchmark」で1,247 Eloポイントを獲得し首位(2025年11月30日時点の同ベンチマーク順位表に基づく)とされ、「NVIDIA HopperおよびBlackwell GPU上に構築」と明記されている。GWM-1の発表はGen-4.5発表からわずか10日後(12月1日→12月11日)で、Runwayが動画生成モデルの世代交代とワールドモデル展開をほぼ同時に進めていたことがうかがえる。ただしGen-4.5の「1,247 Elo」はArtificial Analysisという第三者ベンチマークの数字であり、GWM-1自体の性能を示す数字ではない点には注意が必要だ。
3つの派生モデル
発表文はGWM-1を「3つのバリエーションからなる」と説明している。
- GWM Worlds: 探索可能な環境のリアルタイムシミュレーション。静止画1枚を渡すと、その場から歩き回れる没入的で無限に広がる空間を、ジオメトリ・照明・物理法則込みでリアルタイムに生成する。用途としてゲーム・教育・エージェントの訓練・VR/没入体験が挙げられている。振り返って歩いても背後の景色が保たれる、行き来しても元の場所に戻れるといった「空間の一貫性」を長い移動シーケンスにわたって維持する点が強調されている
- Runway Characters(発表文中でGWM Avatarsと呼称される箇所あり): 音声駆動型のインタラクティブな動画生成モデルで、任意の写実的・スタイライズされたキャラクターに自然な人間の動き・表情を再現させる。発話中・聞いている最中の表情、目の動き、リップシンク、ジェスチャーを、長時間の会話でも品質を落とさずレンダリングするとされる。発表文中の別の一文には「Runway Charactersは、Runway APIとRunway Web製品を通じてすでに利用可能」と書かれている
- GWM Robotics: ロボット操作向け。「Robotics SDK」というPython SDKが用意されており、ロボティクス向けデータで学習したモデルを使って行動条件付きの動画生成を行う。マルチビュー動画生成と長いコンテキストのシーケンスに対応し、既存のロボットポリシーモデルへのシームレスな統合を意図したインターフェースだとされる。利用にはページ内の「Request Access」からの申請が必要
発表文は「今日時点ではこれらは別々にポストトレーニングされたモデルであり、多様なドメインと行動空間を単一の基盤ワールドモデルの下に統合することに取り組んでいる最中」と明記しており、3系統の統合はまだ完了していない未来の目標として書かれている。
GWM Roboticsについては、別途「Runway Robotics」という独立した製品ページが用意されており、そこでは4つの具体的な機能がGWM-1を土台にしたツールキットとして紹介されている。
| 機能 | 説明(公式サイトの記載) |
|---|---|
| Policy Model | カメラからのライブ観測をもとにGWM-1が行動を予測。特定のハードウェア・環境・タスク向けにファインチューニング |
| Video Model Licensing | GWM-1をポリシーモデル訓練用の拡散バックボーンとしてライセンス供与。自社インフラ上にデプロイしファインチューニングを完全制御 |
| Offline Policy Evaluation | 行動シーケンスとカメラ観測をGWM-1に投入し、ポリシーのロールアウトをシミュレーション。実機投入前に失敗モードを洗い出す |
| Data Augmentation | 既存の軌道データを別の環境・照明条件・物体配置に変換。データ収集をせずに訓練データの分布を拡張 |
同ページでは「特殊な計算インフラがなくても始められる」ともうたわれているが、具体的な必要スペックやAPI料金体系は、本稿で確認したページの範囲では明記されていなかった。
Runwayが掲げる理由
発表文の締めくくりでRunwayは、ワールドモデルをAIの進歩の最前線と位置づけ、「言語モデルだけではロボティクス・病気・科学的発見といった世界で最も難しい問題は解決できない」「本当の進歩には、世界を経験し、人間と同じように試行錯誤から学ぶモデルが必要」「この種の試行錯誤は、現実世界でなくシミュレーション内で行えば大幅に加速できる」と述べている。動画生成AI企業としてのRunwayが、次の主戦場を「汎用シミュレーション」に定めていることが読み取れる発表内容だった。
解像度・フレームレートなどの性能数値は非公開
- 発表文・製品ページはテキストと動画デモが中心で、具体的な性能指標(解像度・フレームレート・レイテンシなど)の数値は本稿で確認した範囲のテキストには含まれていなかった
- 「GWM Avatars」と「Runway Characters」が完全に同一の製品を指すのか、発表後に名称変更があったのかは、発表文の表記の揺れから推測しているだけで、Runway側の明確な説明は確認できていない
- 一般ユーザー・開発者が実際にGWM-1(特にGWM Worlds)を試せるのか、申請すれば誰でもアクセスできるのかという運用の詳細は、本稿で確認した発表文からは判断できなかった
- Runway Roboticsの4機能(Policy Model・Video Model Licensing・Offline Policy Evaluation・Data Augmentation)は製品ページの説明文を転記したもので、当サイトが実際にAPIを試した・料金を確認したものではない。「Learn more」の先にある各機能の詳細ページは本稿では確認していない
- Gen-4.5の「Artificial Analysis Text-to-Video Benchmarkで1,247 Elo・首位」という数字は、Runwayの発表ページに記載されている引用であり、Artificial Analysis側の元データを当サイトで直接確認したわけではない
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