Google AI Studioの無料利用、入力内容はAI開発に使われる──Gemini API利用規約を確認する
Gemini API利用規約の原文によると、Google AI Studioと「Unpaid Services」扱いのGemini API無料枠は、送信内容と生成結果がGoogle製品・機械学習技術の改善に使われ、人間レビュアーが入力・出力を読む場合がある。同じアカウントにCloud Billingが紐づいていればGoogle AI Studioは「Paid Service」扱いになりこの対象から外れるという条件を規約原文で確認した。

目次
「無料で使えるAIツールは、入力内容が学習に使われる」というのはよく言われる注意だが、Google AI Studioとgemini APIの無料枠について、実際に規約原文でどこまで書かれているかを確認した人は少ない。この記事はGoogle公式の「Gemini API Additional Terms of Service」原文だけを根拠に、何が明記されていて、何が書かれていないかを整理する。
3行まとめ
- Google AI Studioとgemini APIの無料枠(Unpaid Services)は、送信内容と生成結果がGoogle製品・機械学習技術の改善に使われ、人間レビュアーが入力・出力を読む場合があると規約原文に明記されている
- 同じアカウントに有効なCloud Billingアカウントが紐づいたCloud Project、またはWorkspaceエンタープライズアカウントが紐づいていれば、Google AI Studio自体は「無料で提供されていても」Paid Service扱いになり、プロンプト・応答は製品改善に使われなくなる
- 規約全文に"opt out"という単語は一度も登場せず、Unpaid Servicesを使い続けながらこの学習利用だけを個別にオフにする手段は、規約文書上は確認できなかった
「Unpaid Services」の定義とデータの扱い
規約は、Google AI StudioとGemini APIの無料枠(unpaid quota)を「Unpaid Services」と定義している。そのうえで、データの扱いについて次のように明記している。
When you use Unpaid Services, including, for example, Google AI Studio and the unpaid quota on Gemini API, Google uses the content you submit to the Services and any generated responses to provide, improve, and develop Google products and services and machine learning technologies, including Google's enterprise features, products, and services, consistent with our Privacy Policy.
つまり、Unpaid Servicesを使う場合、送信したコンテンツと生成された応答は、Google製品・サービス・機械学習技術の提供・改善・開発に使われる。この中には「Googleのエンタープライズ向け機能・製品・サービス」も明示的に含まれている。
さらに規約は、品質向上のために人間のレビュアーが介在することも明記している。
To help with quality and improve our products, human reviewers may read, annotate, and process your API input and output. Google takes steps to protect your privacy as part of this process. This includes disconnecting this data from your Google Account, API key, and Cloud project before reviewers see or annotate it.
人間レビュアーが入力・出力を読み、注釈を付け、処理する場合があるが、レビュアーに見せる前にGoogleアカウント・APIキー・Cloudプロジェクトとの紐づけを切り離す、という手順が明記されている。規約は「機密情報・秘匿情報・個人情報をUnpaid Servicesに送信しないこと」と注意している。
オプトアウトの記載は見当たらない
この規約本文を全文確認した範囲では、"opt out"または"opt-out"という単語は一度も登場しない。つまり、Unpaid Servicesとしての利用を続けながら、この学習利用だけを個別にオフにする手段は、少なくともこの規約文書の中には明記されていない。オプトアウトしたい場合は、後述するPaid Servicesへの切り替えが、規約上確認できる唯一の回避策ということになる。
「Google AI Studio」自体がPaid Service扱いになる条件
見落とされやすいのがこの条件だ。規約は次のように定義している。
Your access to Google AI Studio is a "Paid Service" even when it is offered free of charge, as long as the account you are using to access Google AI Studio has access to a Cloud Project with an associated and active Cloud Billing account or is a Workspace enterprise account.
つまり、Google AI Studio自体の無料の使い方であっても、アクセスに使っているアカウントが、有効なCloud Billingアカウントと紐づいたCloud Projectを持っているか、Workspaceエンタープライズアカウントであれば、それは「無料で提供されていても」Paid Service扱いになる。Gemini APIについては、条件がさらに狭い——「有効な課金アカウントに紐づいたCloud Project経由でAPIにアクセスしている場合のみ」Paid Serviceとなる。
Paid Servicesの場合の扱いは明確に異なる。
When you use Paid Services, including, for example, the paid quota of the Gemini API, Google doesn't use your prompts (including associated system instructions, cached content, and files such as images, videos, or documents) or responses to improve our products...
Paid Servicesでは、プロンプト・応答をGoogleが製品改善に使わないと明記されている。ただし、不正利用の検知・防止のため、限定的な期間ログを保持するとも書かれている。
EEA・スイス・英国は無料でもPaid Services扱い
もう一つの例外条件として、規約は次のように明記している。
If you're in the European Economic Area, Switzerland, or the United Kingdom, the terms under "How Google uses Your Data" in "Paid Services" apply to all Services, including Google AI Studio and unpaid quota in the Gemini API, even though they are offered free of charge.
欧州経済領域(EEA)・スイス・英国のユーザーは、たとえ無料枠を使っていても、Paid Servicesと同じデータ取扱いルールが全サービスに適用される。地域によって同じ「無料利用」でも扱いが異なる、という点は規約上明確だ。
Unpaid ServicesとPaid Servicesの条件を表で整理する
ここまで確認した条件を、サービス種別ごとに整理すると次のようになる。
| 項目 | Unpaid Services(無料枠) | Paid Services(有料枠、または課金アカウント紐づけ済みの無料枠) |
|---|---|---|
| 入力・出力の製品改善への利用 | 使われる(明記あり) | 使われない(明記あり。ただし不正利用検知目的で限られた期間ログを保持) |
| 人間レビュアーによる閲覧 | 起こりうる(アカウント・APIキー・Cloudプロジェクトとの紐づけは切り離した上で) | 規約本文に同様の記載なし |
| Google AI Studioがこの区分になる条件 | 上記のいずれにも該当しない、通常の無料アクセス | アクセスアカウントに有効なCloud Billingアカウント付きCloud Project、またはWorkspaceエンタープライズアカウントが紐づいている場合 |
| Gemini APIがこの区分になる条件 | 上記に該当しない無料クォータでのアクセス | 有効な課金アカウントに紐づいたCloud Project経由でのアクセスのみ |
| EEA・スイス・英国のユーザー | 該当なし(無料枠でも下記の扱いが適用される) | 無料枠であっても「Paid Services」の"How Google uses Your Data"条項がすべてのサービスに適用される |
(表は規約原文の該当箇所を項目別に並べ替えたもの。太字の引用部分は本文中に原文と訳を掲載している。)
何が「学習に使われる」対象になるか
規約は、Googleに付与されるライセンスの範囲についても言及している。「Submission of Content」節のもとでGoogleに付与されるライセンスは、プロンプト(関連するシステム指示・キャッシュされたコンテンツ・画像や動画、文書などのファイルを含む)と、生成された応答の両方に、適用法で必要な範囲まで及ぶとされている。なお、モデルのチューニング機能にアップロードしたコンテンツについては別枠で、「そのチューニング用途のためだけに」利用され、チューニング済みモデルを削除すれば、関連するチューニング用コンテンツも削除される、という規定になっている。
Pricingページの料金表にも「Used to improve our products」の欄がある
Gemini APIの公式Pricingページ(ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing)をあわせて確認すると、モデルごとの料金表そのものに、この扱いの違いが行として明記されていることが分かる。たとえばGemini 3.7 Flashの標準料金表には「Used to improve our products」という項目があり、Free Tierの列には「Yes」、Paid Tierの列には「No」と記載されている。ページ冒頭のプラン比較でも、Freeプランの特徴として「Content used to improve our products」、Paidプランの特徴として「Content not used to improve our products」という一文がそれぞれ添えられている。規約の条文だけでなく、料金表という利用者が実際に目にするUI上にも、同じ区分がそのまま反映されている。
ログの保持期間──「課金有効プロジェクトのオプトイン ログ」については確認できた
公式ドキュメント「Data logging and sharing」(ai.google.dev/gemini-api/docs/logs-policy、最終更新2026-09-03 UTC・2026年9月4日に再取得)は、規約本文にはなかった保持期間の具体的な日数を示している。ただし対象が限定されている点に注意が必要だ。このページが扱う「ログ」は、あくまで課金が有効になっているプロジェクト向けに提供される、開発者所有のオプトイン機能としてのログ(Google AI StudioのLogs and Datasetsインターフェースで確認できるリクエスト・レスポンス・メタデータ)であり、それ以外の目的(不正利用監視など)で保持されるログとは別物だと明記されている。
"Logs are retained for a default maximum period of 55 days. After this period, logs are automatically marked for deletion. The storage retention window for a project can be updated in AI Studio to automatically mark logs for deletion after 7, 14, 28, or 55 days."
(ログは既定で最大55日間保持される。この期間を過ぎると、ログは自動的に削除対象としてマークされる。プロジェクトの保持期間は、AI Studio上で7日・14日・28日・55日のいずれかに変更できる)
このページはさらに、課金有効プロジェクトの既定挙動についても明記している。
"By default, because logging is only available for billing-enabled projects, prompts and responses within logs are not used for product improvement or development, in accordance with our Terms on data use."
(既定では、ロギング機能自体が課金有効プロジェクトのみで利用できるため、ログ内のプロンプトと応答は、データ利用に関する規約に従い、製品改善・開発には使われない)
つまり課金有効プロジェクトの既定挙動は、本記事で確認した規約本文の「Paid Servicesはプロンプト・応答を製品改善に使わない」という説明と整合している。ただし、このページはもう1つ重要な条件を明記している。プロジェクトのオーナーが自分のログから「データセット」を作成し、それをGoogleと共有することをオプトインで選んだ場合、その共有されたデータセットは——たとえ元が課金有効プロジェクトのログであっても——「Unpaid Services」向けの規約に従って処理される、という条件だ。
"When you share a dataset with Google, your logs in that dataset, including requests and responses, will be processed in accordance with our Terms for 'Unpaid Services,' meaning the dataset may be used to develop and improve Google products, services, and machine learning technologies, including improving and training our models."
(データセットをGoogleと共有すると、そのデータセット内のログ(リクエスト・レスポンスを含む)は「Unpaid Services」向けの規約に従って処理される。つまり、そのデータセットはGoogle製品・サービス・機械学習技術の開発・改善——モデルの改善・訓練を含む——に使われる場合がある)
なお、データセットとして保持されたログには、既定の保持期間の上限が設定されていないことも同ページに明記されている("Logs stored in datasets don't have set retention periods.")。
それでも確認できなかったこと
限界を先に書く。
「機械学習技術の改善」の具体的な範囲。 「to provide, improve, and develop... machine learning technologies」という記述はあるが、具体的にどのモデルの訓練にどう使われるか、という技術的な内訳までは規約に明記されておらず確認できていない。
Unpaid Services(無料枠)自体の既定の保持期間。 今回新たに確認できた「55日」という数字は、あくまで課金有効プロジェクトが任意でオンにするオプトイン ログ機能の保持期間であり、Google AI Studioやgemini APIの無料枠(Unpaid Services)を素の状態で使った場合の送信内容・生成結果そのものの保持期間ではない。Unpaid Servicesの既定の保持期間について、規約本文・「Data logging and sharing」ページのいずれからも具体的な日数は確認できなかった。Paid Servicesの不正利用検知目的のログについても「limited period of time(限られた期間)」としか書かれていない。
プライバシーポリシー本体を確認したが、Gemini API固有の保持期間は書かれていなかった。 policies.google.com/privacyをcurlで追加取得したところ、データ保持について「サービスは偶発的・悪意ある削除から情報を保護するよう設計されているため、削除の指示と実際にバックアップシステムから消えるまでにタイムラグがありうる」という一般的な記述と、より詳細な「データ保持期間」の説明ページへのリンクがあるのみだった。また、このプライバシーポリシー本体は「Gemini Apps」(対話型アプリの方)については個別のプライバシー告知ページへのリンクを掲示しているが、Gemini API・Google AI Studio向けの個別告知ページへの言及は、このページ本文では見当たらなかった。つまりGemini API固有の、Unpaid Servicesとしての具体的な保持日数は、今回確認した4つの一次資料のいずれからも特定できなかった。
関連記事
出典・参照資料
AIニュースの解説を動画でも
YouTubeでは注目ニュースの背景を解説し、Xでは新着記事をお知らせしています。
コメント
まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?
AIについて聞きたいことはありますか?
質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。
質問箱を見る →新しい記事をメールで受け取る
AIの新しい発表を、出典付きで整理して届けます。